中学生を中心とした十代リスナーが多いと思われるAMラジオ番組で放送していた、この時期ならではの卒業ソングベスト40というランキングをまとめて聞いた。
結論から言うと、知っている曲が半分も無かった上に、1~7位までのトップを占める曲全てが分からず、こういうところで改めて世代の違いを感じてしまう。全体的に、卒業ソング+意図は違えど卒業ソングともとれる曲+春の曲がミックスされたような内容で、1位はレミオロメンの‘3月9日’という歌だった。
かなり平凡な思考回路を辿ると、卒業式が開かれる時季といったら桜の淡いピンク色が頭に浮かぶ。
実際桜が見ごろになるにはもう少し時間がかかりそうだけれど、その前に、春というか桜の印象つながりで、昨年の年明け早々に見た映画のレビューを1つ、ここに書き留めておこう。
【秒速5センチメートル】
--- イントロダクション ---
秒速5センチメートルのストーリーの流れをシンプルに言うならば、時間や場所を変えて変化していく登場人物達の心理描写を主として、3部構成で描かれた作品。
第1章の「桜花抄」では、小学校卒業と同時に離れ離れになり、文通を繰り返す中学生になった遠野くんと明里が再会する過程が描かれ、高校生になった遠野くんの転校先である種子島を舞台に、彼に一目惚れした花苗目線で第2章の「コスモナウト」は綴られる。そして、表題にもなっている第3章の「秒速5センチメートル」の中で、社会人になった遠野くんと明里、2人の生活をそれぞれの視点から見ることができる。
この作品に触れる時、第一に言及すべきは背景画だろうか。
写真をベースにした手法で作られているということで、2.5次元とも呼ばれる理由がプレビュー(youtube より)を見るだけでも納得できる美しさだと思う。
また、その背景に合った作中に流れる天門さん作曲のBGMも、ラストに流れる山崎まさよしさんが歌う‘one more time one more chance’ も印象的だ。後者が遠野くんの心を反映しているような歌詞で、こんなに作中の人物の心境とマッチしているように思える曲も、私にとっては、「さよならみどりちゃん」と言う作品で星野真里ちゃんが歌った‘14番目の月’以来だ。
そして肝心のストーリーラインは、好き嫌いが比較的はっきりと分かれる類のものだと思う。個人的には、韓国ドラマによくありそうなエンディングにならなくてよかった~と安堵した。
明里の心に変化している面がある一方、遠野くんは過去に抱いた思いの中に留まり続けている。遠野くん役の声優さんは、小学校時代から現在にかけてずっと1人で演じている反面、明里役の声優さんが子供時代と大人になってからとで変わっているのは、こういうところに変化をつける意味もあるのかな。会話以上に1人語りのシーンが多く、朗読に向いている作品であるようにも思えた。
2人の心にある思いの違いがそれぞれ行動に現れる過程を見て、女性は現実的で男性は過去の思いをひきずるもの・・・なんてことを言う人がまた増えるんじゃないかと思うけれど、これは人によりけりで、今回はたまたま主人公が男性だったというだけの話。女性でも、遠野くんのような人は多かれ少なかれいると思う。
<+α のはなし>
このストーリーに登場した明里が、ある企業CM(youtube より)のアニメーションに登場しているという情報を見つけ、早速動画サイトで検索して見てみると、確かに明里に似た女性に見える。
ついでにもう一つ、同監督作品の信濃毎日新聞のCM(youtube より)を久しぶりに見て驚き。歌を担当しているのが、タテタカコさんだ。いろいろ繋がっているな~。
監督:新海誠
出演(声):水橋研二・近藤好美・花村怜美・尾上綾華
65分 (2007)